108か国中の96位
高いとは言えないこの順位、一体何の順位でしょう。
これは、国際労働機関(ILO)が発表した、女性の管理職比率のランキングです。最新の報告書「Women in Business and Management : Gaining momentum」によると、日本は先進国の中で韓国の次に低い11.1%の96位でした。ランキング全体の上位は1位がジャマイカの59.3%、2位がコロンビアの53.1%、3位はセントルシアの52.3%でした。先進国の中ではアメリカが最上位で42,7%、イギリスが41位で34.2%、ドイツが55位で31.1%などとなっています。EU加盟国など多くの先進国の平均値が30.0%を超えていることからも、日本の女性の社会的地位の低さがうかがえます。
女性が輝く日本へ
近年、日本でも女性の社会進出を促す声がよく聞かれます。この問題に対し、実際に現在の政府がどんな目標を設定し、政策を展開しているのか見ていきましょう。
三本の矢
平成25年6月14日、日本の経済再生に向けた政策「三本の矢」の三本目の矢として成長戦略、「日本復興戦略-JAPAN is BACK-」が閣議決定されました。この成長戦略は「投資の促進」「人材の活躍強化」「新たな市場の創出」「世界経済とのさらなる統合」の四つの分野に分かれており、民間企業や個人が十分に力を発揮するための方法がまとめられています。
今後、日本が経済成長を続けていくための一つの指標となっていくでしょう。この中の「人材の活躍強化」のパートでは、他にも女性・若者・高齢者などがより地位の高い職に就けるような取り組みを提示しています。
「成長戦略スピーチ」
安倍総理は2013年4月19日の最初の「成長戦略スピーチ」の中で女性の地位向上へ向けての活動について語りました。現在の日本政府には「2020年までに女性の管理職への就職率を30%に引き上げる」という大きな目標を掲げています。具体的には、待機児童問題、復職や再就職、女性の管理職への登用などの課題を解決するための政策を展開しています。
現状と課題
「M字カーブ」問題
「成長戦略スピーチ」の中で安倍総理も触れていますが、日本の女性の社会進出は他の先進国と比べてかなり遅れを取っています。またこの問題を考える上で無視することができないのが出産後の離職率の高さです。
現在の日本では女性の労働率が、結婚や出産の時期に当たるとされる20代後半から30代にかけて急に下がり、数年後の落ち着いた時期に再上昇しています。この推移の仕方がMの形を描くという、いわゆる「M字カーブ」の問題です。
そしてこの現象は、女性管理職比率が低い日本や韓国で顕著に見られることも特徴的です。1970年代にはアメリカやヨーロッパ諸国などその他の先進国で見られていたものの、現在はほとんど見られません。
雇用形態の問題
出産・結婚を機に仕事から離れた女性たちが数年後に職場復帰をする例はとても多いですが、その際の雇用形態の変化が問題視されています。もともとは正規雇用として働いていた女性が、ライフステージの変化に合わせて非正規雇用へと変化しているようです。
海外と比べてみよう!
先ほど紹介したように「2020年までに女性の管理職への就職率を30%へ」という目標を掲げている日本政府ですが、現状では他国と比べてかなりの遅れをとっています。その他の先進国と日本とではどんな違いがあるのでしょうか。
法律化が進む欧州
女性の首相なども多く存在する欧州諸国。実際に様々な国で、女性の社会進出を後押しする動きがあります。世界経済フォーラムが発表しているGender Gap指数が比較的低いノルウェーやフランスでは以前から、上場企業の取締役に就く女性の比率を40%以上にすることが義務付けられています。
ドイツでも「女性クオータ制」という、大手企業の監査役会や管理職に就く女性の比率を30%以上とする法案が可決されました。その他にもスペインやイタリア、イギリスでも似たような法律が存在や、女性の社会進出を助けるための動きがみられています。
日本社会にこれから必要なものってなに?
先ほど数値を上げた2016年のGender Gap 指数、なんと日本は144カ国中の111位でした。日本の女性の社会進出を促す動きや体制はまだまだ不十分です。女性の長期雇用のための仕組みが不十分であり、共働き世帯に対しても税制度などの負担が大きいと指摘する専門家もいます。しかし、他国と比べて最も日本に不足しているものは、社会の雰囲気ではないでしょうか。男女で協力して育児や家事をする、必要な時には休暇を取る、など政策よりももっと大切なことがある気がします。
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「他国と比べて遅れている」というイメージだけはある女性の社会進出の問題ですが、現在の日本がどのような状況にあるのか理解していただけたでしょうか?
結婚・出産・育児・仕事など女性なら誰もが一度は考える問題だと思います。また、多くの男性にも他人事と思わず考えてもらいたい問題です。今後の人生について考える機会も多い大学生活、この問題もきっとみなさんの人生に関わってくるでしょう。今一度考えてみませんか?
参考:首相官邸 安倍総理「成長戦略スピーチ」平成25年4月19日http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0419speech.html