単身海外でスポーツイベントを。僕が学んだ世界と、国を股に掛けるために必要な力|近畿大学 4年 片山 裕之

インタビュイープロフィール

片山 裕之(かたやま ひろゆき)
近畿大学4回生

ベトナムハノイでクラウドファンディングにより資金集めをし、現地で初のアマチュア国際サッカー大会を開催した大学生がいます。「いつも同じメンバーでやってるより、大会を開催して色んなチームと試合した方がおもしろくないですか?」現地の社会人サッカーチームに加入し、日本人駐在員とサッカーをしていた彼は、ある時そうつぶやきました。周囲は冗談だと捉えていたかもしれません。しかし、彼は本気でした。インターンシップとしてベトナムの企業で働いていた彼が、なぜ国際サッカー大会を開催するに至ったのか。近畿大学4回生、片山裕之さんが挑んだ理由と大事にしていることは何か。お話を伺いました。

現地人から信頼を得る実感

——まずは国際サッカー大会を開催した経緯を教えてください。

VeHoWorksというコンサルティング系の少数でやっている会社にインターンで入っていました。もともと、「自分で事業を作ろう」という思いがあったのですが、単身でやるには信頼だったり学生という立場だったり、難しいことも多いなと思って、VeHoWorksに入ることで、自分の事業をコンサルティングをしていただきながら進めていきました。
その時、自分がやろうとしていたことは「スポーツイベント」で、サッカーの国際大会を作りたいと思っていました。インターン先の社長に事業計画を作っては見てもらい、ご指導していただいて、そこから実際の行動計画としてタスクに落とし込み、一個一個に期限を付け、優先順位を付け、というようにまさにコンサルティングを受けながらその企画を進めていきましたね。

——なるほど。現地で信頼関係を築くのは大変だったと思いますが、どのように信頼関係を築いていったのですか?

そうなんですよね。大変でした。当時その会社のスタッフでベトナム人の方がいらっしゃって、僕よりもめちゃくちゃ優秀な方だったんですけど、ある時「あ、俺のこと信頼してくれた!」っていうタイミングがあったんです。国際サッカー大会を開催するに当たって、9カ国の代表者を集めて会議をやってたんですよね。結構リマインドしていかないとドタキャンされるかもしれなくて、それで、僕は英語があんまりうまくないんですけど、チームの代表者10人くらいの前で目的だったりやる意義だったり、ネイティブの方の前で、英語でプレゼンをするという状況がありました。

その時に「ヒロ(片岡さんの愛称)は普通の日本人と違うね」とベトナム人のそのスタッフに後から言われたんです。どういうことかというと彼女曰く「普通の日本人はお前くらいの英語のスキルじゃ外国人の前に出てスピーチなんかしないよ」と(笑)。それで「お前はすごい」と。まぁこれ半分馬鹿にされてるんですけど、この時が「あ、こいつ俺のこと認めてくれた!」っていうタイミングですね。それは嬉しかったです。

僕なりのYYJ

——なるほど。それは嬉しいですね!ですが、そもそもなぜサッカー大会をやろうと思ったのですか?

もともと、自分で事業を作りたいと思っていて、その時に「自分は何がやれるのか」「それはやりたいことなのか」「需要があるのか」という3点を自分は考えるようにしてて。

——YYJってやつですね。

そうです!それで、やれることっていうのが、スポーツイベントの運営でした。以前日本でそういった類のインターンをしていたんです。日本全国飛び回ってイベントの運営をしていたから、そのノウハウがあったんですよね。
そして、やりたいことっていうのが、自分でゼロから多くの人を巻き込んで事業を作りたい、というのがあって。ゼロからいろんな人を巻き込んで行くとイベントになる。
そして、そこに需要があるかっていう話になります。

ベトナムに行ってすぐに日本人の駐在員の方のサッカーチームに入っていました。毎週金曜に日本人だけだったり、ベトナム人だったり毎回同じ人と練習やら試合やらしてるんですよ。これ絶対大会とかあった方がおもろくないっすか!?みたいに思って。毎回同じ感じでやるより、大会やったらどうすか、と話しをしたら「そりゃあったらおもろいけど、なかなか大変やで。ゼロから作るのは。」と言われまして。そこに需要はあった訳です。
「僕ちょうど今の会社辞めてフリーになるんで、それ作ってみていいですか?」みたいな(笑)。「作ったら自分出てくれます?」と。
俺は本気なんですけど、こんな軽い感じで言ってたので「まぁやってみなよ~」という感じで言われまして、そしたらもう「じゃあ本気でやろう」と思って実行しました。

足を動かし人を動かす

——すごい勢いですね。具体的にはどのように進めていったのですか?

まず、周りからの信頼を集めるためにとにかく動き回りましたね。
そもそも急に日本人の学生が「国際大会やります!」と色々謳っても集まらないわけですよ。じゃあどうしらいいかと言ったら、僕は頭より足を動かすタイプなので、仲間に入れてくれ、とサッカーをしに行ってました。
日本人のサッカーチームがあるように、色々な国のチームもあるんです。水曜日はフランスのチーム、金曜はナイジェリアのチームみたいな感じで参加し、毎週夜ずっとやってて(笑)。本当にピーク時は週5~週6でいろんなチームに参加してました。

最初の頃は日本人の学生が来たというので混ぜてもらっていました。そうすると、結構そのチームの方から「ヒロ来なよー!」って声かけてもらえるようになって。お酒も飲んだり。自分のことを信頼してもらって「お前がやる大会なら出るよ」って言われるくらいに持っていかないとできないと思っていたので、そういう活動を1ヶ月くらい続けていましたね。

まぁいきなり最初から「国際サッカー大会やるので参加しませんか?」と営業しに行くと信頼してもらえないので、まずは本当にシンプルに一緒にサッカーを楽しみました。
そこで、これいけるなって思った時に「出てくれませんか?」と言って誘っていきました。でもまぁそこからは「出る出る!って言ってるけど本当に出るの?」って感じで。大会直前まで出るのかどうかわからないっていうのは怖かったですけどね。

国をまたいでも信頼第一

——なるほど、信頼してもらうっていうのはすごく大事ですよね。ここまでのことをするのにはかなりのプレッシャーがかかると思いますが、企画を進めて行く上で大事にしていることはなんでしょうか?

0→1で一番大事なのはやっぱり信頼されることだなと思っています。特にベトナムに行ってそれは実感しました。現地の日本人に助けてもらったり、現地のスポンサーだったり、フリーペーパーに載せてもらったり、それは全部紹介でした。人脈は全くなかったし、やっぱり僕のことを信頼してもらわないとそこまで協力してもらえないんです。その時に挨拶とか礼儀は徹底しました。そういうのはすごく大事だと思っていて、それは日本とか外国とか関係なくです。その積み重ねは意識してましたね、本当に。

——元からまめな性格だったのですか?

いや、結構雑な性格なんですよね(笑)。しかし、連絡とかは、ベトナムに行って特に意識していました。ハノイって日本人が少ないんですよ。良い噂も悪い噂もすぐ広まるんです。
それこそ、日本人の大学生がそもそも少ないので「自分がイベントをやる」っていう話は結構簡単に広まってくれたんです。だから、僕が1個1個のことを雑にしちゃうと、それもすぐに広まっちゃうんです。そういう環境が、ある意味すごく勉強になる環境でした。今では本当にハノイでよかったなと思っています。

——なるほど、その信頼を大事にするというのはなにかの失敗経験などからきているのでしょうか?

失敗と言いますか、お叱りを受けたことは結構あります。僕はこまめな連絡が得意じゃなかったんですよね。結構みんなFacebookとかで海外に行く時に報告とかしてるじゃないですか。ベトナムに行くっていう報告とかも、「俺のこと興味ないやろ」と思って言わなかったんです。そしたらお世話になった1人の社長さんに「FB見たぞ。お前ベトナム行ってるんか、なんで俺に報告ないねん。」というようなメッセージをいただきまして……。そういうのが筋通ってないねん、って「あぁそうかなるほど。これが足りてないんだな。」とそこで思いました。

これは別に雑というか、自分が及んでなかったなと。そういうこともあり、今回クラウドファンディングでお金を出して下さった方には帰国してから挨拶回りに行かせていただいて、というのはやらせていただきましたね。

起業に求められる力は能力よりも人間力

——ベトナムに行ったことで何か変化はありましたか?

僕は起業したいという思いがあるんですけど、今まではとにかく「能力を高めよう。自分自身が強くなれば成功できる。」と思ってました。でも、全然そうじゃないんですよね。逆に能力低くても、本当に周りとの付き合い方だったり筋を通すことだったり、人間としての魅力の部分の方が明らかに大事だと思っています。自分は人間力の方で勝負しないと絶対勝てないなと思ったんです。皆さんはよく、自分の成長っていうところにはフォーカスしますけど、人間として信頼してもらえるようなことの方が大事なんじゃないかなという思考の変化がありました。それは、ベトナムでのインターンでの経験というかこの国際サッカー大会をきっかけにですね。

——なるほど大きな変化ですね。そもそも、なぜ海外インターンに行ったのでしょうか?

インターンに行く前は学生をどんどん海外に送るっていう事業がしたかったんです。じゃあどうやればいいかな、どういう風に海外とのコネを作っていこうかなと思っていました。そこでインターンに興味があるふりをして学生の海外インターン紹介をしている企業の社長さんに会いに行ったんです。その時に「実は今日来た理由としてはあなたのビジネスモデルを聞きに来ました」といきなり言って(笑)。そしたら、すごい白熱して、正直、大人とか信頼してないので「僕全然あなたのこと信頼してません」とか言って(笑)。

その社長さんってすごくモチベーターなんですけど、僕はどうしたら良いかと聞いたら「まずお前が行けよ」と言われて。まずはお前が向こうに行って働いてこい、そしたら見えるんじゃないか、と。すごい丸め込まれたみたいな感じですけど、本当にそうだなと思って。自分が仕事してないのに、海外に学生を送るっていうのは自分がユーザーだったら嫌だなと。

——おお、それは結構ぶっ飛んでますね(笑)。片山さんのその原動力はどこから来ているんでしょうか?

目的への達成意欲って言うんですかね。これをやるって言ったら絶対やる。「自分は海外で事業をしたい」だったら「海外を知らないといけない」と言うように、必然的にやらなきゃいけないと思ったんです。行かないという選択肢はなかったと思います。基本的にやるやる言ってやらない学生が一番嫌いですしね!

最後に。

——最後に、インターンを通じで得たこと、学んだことをお聞かせください。

総括すると、サッカーの件でも色々メディアに出させてもらったりとか周りから評価されて嬉しいのですが、自分としてはできなかったことの方が大きいと思っています。全く満足できていないんです。

結構、これは自分の心境の変化ですね。今までとはかなり、変わりました。今までは高校も、受験勉強して入学しましたけど、そのあとは勉強しないとかがあって。今は、もっとこうしておけばよかった、ここはダメだったな、だから次はこうしよう、というところに思考が行くようになりました。視野が広くなったのかなと思います。
あとは、目標への逆算的思考がしっかり出来てきてると思っていて、こうなりたいっていう目標への現実的な逆算ができてるから、ギャップが見えるようになったのはあると思います。