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家庭と仕事を両立する女性、かっこ良くないですか?
女子大生の皆さん、社会に出てどんな働き方がしたいですか?
良い家庭を持ちたい、バリバリ働きたい、人それぞれに働き方の理想があるでしょう。
将来はバリバリ働きたいと思っている筆者ですが、「社会人」と聞くと女性よりも男性が働いているイメージが強く沸き、一般的には女性よりも男性が管理職の場合が多い印象です。
しかしここ最近は女性の社会的地位が改めて認められ、女性が社会で活躍しています。
そのため、今までのように「仕事もしたいけど家庭も大事にしたい。しかし子供ができたらどちらかを選ばなければならない。」と選択を迫られ、どちらかを諦めるという必要はないのです。
今一度ニュースでしばしば耳にする「ジェンダー」について知識を深め、今後の将来像を描く参考にしてほしいと思います。
ジェンダーの意味、本当に知ってる?
世の中では、無意識的に「男らしさ」「女らしさ」という区別が存在しています。その考え方をジェンダーと言います。まずはこの「ジェンダー」について触れていきます。
「ジェンダー」とは、社会的・文化的・心理的に形成された性別のことで、
生物学的な性別である「セックス」とは区別されます。
私たちは生まれた時点で、生物学的に「男」なのか「女」なのか区別されています。
しかし「男らしさ」「女らしさ」という概念は、必ずしも「男」「女」という性別に当てはまるとは限りません。
社会の中に存在する「男ならこうあるべきだ」「女ならこうあるべきだ」という価値観は、成長の過程で段々と身についていくのです。このような固定観念が、「ジェンダー」という概念です。
女性とジェンダーの歩み
そもそもこのような社会的、文化的、心理的な性差を表す概念としてのジェンダーは、どのように誕生し使用されるようになったのでしょうか。
ジェンダーという概念が使われ始めたのは、第2波フェミニズム運動が盛り上がっていた1970年代であるといわれています。
皆さんフェミニズムとは何か知っていますか?フェミニズムとは、
「性差別に反対して、女性の権利拡張を主張する考え方や運動のこと」(wikipediaより引用)です。
このフェミニズム運動は、運動が起こった時期によってそれぞれ区分されています。
女性達が立ち上がる!
第1波フェミニズム運動は、1800年代後半から1920年代に盛り上がりました。
男女差別が法律上明確に存在していた当時、女性達がその是正を求めてデモなどを行い、婦人参政権運動という形で闘ったのです。
この運動により、完全にではないものの、法律上の男女平等はある程度認められました。
本当の男女平等を目指して
しかしそれでも「女性の幸せは結婚することだ」というような観念は残り続けており、女性たちの中には生活に不満を感じる人も多くいました。
このような「女らしさ」という価値観は法律上では撤廃されたものの、1人1人の固定観念からはまだ消えていなかったのです。そのため実質的な女性差別の改善を求めて始まったのが1960年代からの第2波フェミニズム運動です。
このようなフェミニズム運動の高まりの中で、社会的、文化的、心理的な性差別を表す概念としてのジェンダーが誕生し、以後のフェミニズム運動や様々な学問分野の発展に大きく貢献していくことになるのです。
ジェンダーと社会問題
ここまでは、ジェンダーと女性たちの歴史について振り返ってきました。
ここからは、ジェンダーと社会問題について考えてみたいと思います。
ジェンダーに関する社会問題は非常に多種多様です。そのため全てについて説明することは非常に難しいので、ここではその中の1つである日本での労働におけるジェンダー格差について取り上げます。
ジェンダー格差の発端って?
日本社会では「男は仕事、女は家事・育児」というような考え方が、今でも残っています。
このような考え方は、まるで遥か昔から存在していたかのように語られることも多いのですが、実際はそうではありません。
このような考え方は、近代の産業化の過程で形成されてきた考え方なのです。
近代以前の日本社会において、家庭の仕事も男性の仕事の1つでした。江戸時代は子育てに父親が積極的に関わっていたと言われており、職場に子供を連れて行く父親も多くいました。
ただしその背景には、家庭の仕事や子育てのような大事なことは女には任せられないというような差別的な発想があったそうです。
産業化による工業社会が始まると、各地には工場ができ、男性も女性も子供も労働力として動員されていきました。
しかし子供は、体力がないため病気になりやすく、女性は妊娠や出産、子育てをするため仕事から離れる必要があり、
次第に男性のみが家庭から離れて工場で働くようになったのです。
この様な流れから、家庭のことは自然と女性に任されるようになり、現在のような「男は仕事、女は家事や育児」というような考え方が成立しました。
未だに残る男女格差
上記の様な考え方が江戸時代頃に生まれていましたが、現在も未だにそのような考え方は消えてはいません。
労働やジェンダーなどの社会学を研究している大槻奈巳(2015)は、
「働く」ということをジェンダーの視点から見ると
- 働くことに関して、ジェンダーで規定され男性と女性で異なる部分がある。
- 働いて得られる報酬に男女差がある。
この2点を指摘出来るとしています。
例えば女性の就業率や正規雇用の割合は、男性に比べると低いという現状があります。
また企業側は、女性に対して男性とは違う職務を割り当てる場合もあり、女性の職業的なキャリア形成を狭めることに繋がっていると言えるでしょう。
賃金についても、日本の一般労働者に占める女性の賃金は男性の約7割です。
最後に大槻(2015)は、このような格差を是正するためには各個人・各企業の中に存在するジェンダー意識を見直すことが必要かもしれないと述べています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「ジェンダー」という概念の定義から男女格差の現状まで、過去の歴史を振り返り、お伝えしてきました。
ジェンダーという概念は社会の中では今だに存在しており、また個人が無意識に思い込んでいる場合も多いため気付くことは簡単ではありません。
しかしこの風潮に負けない強い女性が社会には多く現れてきています。
働く上で、「女性だから」と諦めることはないんです!
男女共に上記の様な考え方を知り、自分の描く社会人像に生かして頂ければ幸いです。
参考文献
伊藤公雄・牟田和恵編『ジェンダーで学ぶ社会学』世界思想社, 2015年
伊藤公雄『新訂 ジェンダーの社会学』放送大学教育振興会, 2008年
江原由美子・山田昌弘『ジェンダーの社会学』放送大学教育振興会, 1999年