2016年現在、設立された株式会社の85%以上は5年以内に廃業、10年以内に倒産する会社は90%超え。多額の資本金を持たずとも誰でも株式会社の設立が可能になった。
目次
「新会社法」の目的は?それでも挑戦してみたい、学生起業のメリットとは?その真相を検証していきましょう。
①新会社法とは
2006年5月より施行された「新会社法」にて、多額の資本金を持たずとも誰でも株式会社の設立が可能になったことにより、若い人の立ち上げによる新規中小企業が増えました。可能性に溢れたアイディアややる気を、資金がないという理由で潰してしまうのではなく、より多くの若者に機会を与え、スモールビジネスを増やし、社会発展の向上も図ろうという目的によるものです。そのため、近年、「若手起業」、「学生起業」という言葉をよく耳にするようになりました。
新会社法での主な変更点:
(1)「有限会社を廃止、全て株式会社に統合」
(2)「合同会社の規定」
(3)「株式会社の機関設定の自由度を向上」
(4)「資本金1円でも株式会社の設立が可能に」
引用:https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%B3%95-4674
★新会社法で何が可能になった?
- 最低資本金額が1,000万円以上 → 1円から可能
- 取締役の人数が3人以上 → 1人でも可能
- 監査役1人以上 → 任意
- 資本金払込金の保管証明書は金融機関にて発行 → 通帳のコピーのみで可能
つまり、株式会社の登録として初期費用に30万円ほどあれば、誰でも、自分1人だけでも、株式会社の設立が可能になったということです。
大きな費用をかけずとも、設立が可能になった株式会社。今までは事業を始めることができなかった企業でも、起業が可能になったことが、設立された会社の数に対する成功率が下がった大きな理由であるといえるでしょう。
しかし、チャンスを与えられ会社設立を成し遂げた多くの企業が、その後、なぜうまくいかないのでしょうか。
②新規中小企業倒産の原因
失敗するどの会社にも共通するものではなく、新会社法にて設立が可能となった新規中小企業特有の倒産の原因についてまとめていきます。
⑴初期資金不足
旧商法時代では最低1000万円の資本金が前提であったものが、新会社法で設立された会社では事業存続のために頼れる資金が十分にないというところがほとんどです。資金が底を尽きれば、人件費、商品の仕入れ費、金融機関の借金の返済、毎年1、2度にまとめて請求される多額の税金の納付などの出費に対応することができず、そのお金を払えないと、会社は倒産せざるを得ません。
販売している商品、サービスの売れ行きがよく、企業への利益が出ている間は出費に対応することができるでしょう。しかし、売れ行きが止まった時点で出費も無くなるわけではありません。売り上げ改善のために、利益が出ていない間も人件費、マーケティング費用などさらに出費が増すでしょう。それを補うほどの初期資金がなければ、会社存続は厳しいと言えます。
⑵税金の落とし穴
★法人税
個人で稼いだ所得(収入)に対し所得税を払うのと同様、法人が得た利益(所得)に課せられる税金があります。それが、法人税です。企業が払う必要のある税金は、法人税の他に、法人事業税と法人住民税があります。詳しい規定は会社の利益や規模によって異なり、資本金が1億円以上の法人であれば(法人税+法人事業税+法人住民税)の合計を実効税率で割った数の約40%が、企業が国に支払う法人税率となります。
よって企業は、従業員に支払う人件費、オフィスの賃料なども含め、会社の運営にかかったすべてのコストを抜いた、会社(つまり社長本人)が得た”利益”(所得)全体の40%もの額を、税金として納めなければいけません。
この法人税以外にも、実は企業が国に納める税金はたくさんあるのです。しかし、問題は高い法人税率の額そのものだけではなく、年に1度、または半年に1度の、納付の時期。つまり、まとまったキャッシュアウトの悲劇なのです。
- 消費税
消費者から、販売する商品/サービスに対して一旦預かる消費税。法人税と共に、消費税は毎年1度、決算日の2か月後に納付。 - 源泉所得税
毎月の給与額に応じ従業員から天引きし、半年に1度、会社がまとめて納める税金。
その他の税金は置いておき、上記のまとめて支払わなければならない主な税金に関しては、一度に多額のキャッシュ・アウトが発生することになります。十分な資金がない企業は、この税金を納付の時期まで保持することができず、倒産してしまいます。
それでも学生起業が良い理由
⑴失敗してもいい
法人の設立に関して、設立そのものは簡単であれど、資金がなければ維持が難しいということはわかりました。しかし何より学生起業のいいところは、失敗しても失うものがほとんどないということです。あくまでも、本業は学生です。もし失敗してアルバイトで貯めた数十万円の資金を失うようなことになったとしても、学生は経験を得ます。大人になって貯めた数百万の資金を使い果たし、生活を失い次の就職まで行き場がなくなってしまうよりもリスクはかなり少ないと言えます。また、何も起業は株式会社を設立する必要はなく、個人事業で初めてしまえばいいのです。複雑な税金の納付や法人としての登録費用に数十万円使ってしまうより、まずは個人事業主になってリスクを抑えて挑戦してみましょう。
⑵しばらくは利益が出なくてもいい
学生である以上、普段の生活の資金は両親からのお小遣いであったり、奨学金であったり、特に収益を得なくともすでに生活はしています。自分の仕事のみで生活費用を稼いでいかなければならなくなる前に、今後利益を出すための”利益のない期間”を学生のうちに終えてしまいましょう。
株式会社設立が容易になったところで、成功する可能性も高まったわけではありません。一見、”若者たちの可能性を広げる新会社法”のように見えて、それに挑戦したほとんどの若者が倒産しているのは事実です。一方で、株式会社が増えることで国に税金を納める法人が増え、お国としてはありがたいというのも事実であり、果たして新会社法とは誰のためのものであったのか、という質問が湧いてくるかもしれません。
それでもやはり、資金1000万という大きな壁がなくなったことで、いまや多くのベンチャー企業が活躍しています。学生起業を考えている方、自分も遭遇するかもしれない実際問題を知って、しっかりと計画を練って挑戦していきましょう!