イギリスのEU脱退とその影響
イギリスがEUを脱退する⁉そんなニュースが世間を驚かせたのは随分前に感じられるかもしれませんが、最近大きな動きがありました。なんとイギリスのメイ首相が正式にEU離脱の手続きを開始したのです。
「でもEUってヨーロッパの話だし日本には関係ないでしょ」そう思っている大学生も多いかもしれませんが、イギリスのような大国の話になってしまうと、日本にも必ず経済的な影響が出ます。もしかしたら折角就職した会社がEU脱退の影響で業績不振…なんていうことになるかもしれません。そうならないためにも、この記事を読んで私たちにどう関係してくるのか理解して欲しいです。
そもそもEUって…
EUとはEuropian Union、日本語で欧州連合の略で、ドイツ・フランスをはじめとしたヨーロッパの28国が加盟しています。加盟国同士であれば昔のように戦争は起こらないよねというヨーロッパでの平和の実現や、共通貨幣ユーロの導入や関税撤廃による加盟国間での経済の円滑化、そして政治的統合を目的としています。
なぜイギリスは脱退するのか
EUの目的を知ればなぜEUを離脱するのかと思うかもしれませんが、イギリスにはイギリスなりの事情があるのです。EU離脱を推進している前ロンドン市長のジョンソン氏は加盟国間の経済格差による負担や移民の強制受け入れを理由として挙げています。
①経済的負担
EUの資金は、ドイツ・イタリア・イギリス・スペイン・フランスの5ヵ国で全体の約7割が負担されています。イギリスも10.6%に当たる、約1.7兆円を負担していました。そうした資金の多くは、ギリシャなど経済力の弱い国の補助金に充てられいます。それに対して、不満を持っているイギリス国民は昔から少なくはなかったそうです。
②移民受け入れ問題
EU加盟国では原則として、EU国間での移民難民の受け入れを拒否することはできないとしています。そのため福祉が手厚いイギリスは移民先として大人気で、何十万という移民がイギリスに押し寄せることとなりました。その結果、病院や学校がパンクしてしまったり、電車やバスといった交通機関も大混雑を引き起こすようになってしまったのです。
そうなると当然保険料を始めとした税金は増えるのですが、その負担をするのはイギリス国民です。税金の負担増加はもちろんですが、移民が増えたことにより仕事が奪われてしまったり、治安が悪くなってしまったりと様々な問題が出ているそうです。
その一方でこれらの問題を抱えていながらも、EUは脱退できないと考えている人もいます。その筆頭がキャメロン元首相です。反対派の意見としては、イギリスの経済悪化を問題視しています。
なぜ経済が悪化するの?
ヨーロッパの市場の中心といえば、今までならばロンドンだったのですが、もしイギリスがEUを離脱すると、EU加盟国が拠点をロンドンに置く必要が無くなり、ドイツに中心が移る可能性が高いとされています。
そうなってくると、ロンドンに置かれた世界中の金融機関が一斉に撤退し、金融関係で100万人近い失業者が出るとされています。そうなってしまうと、イギリスの経済悪化はどうやっても避けられるものではないと考えられています。
ではイギリス国民はEU離脱についてどう考えているのでしょうか。2016年6月23日にEU離脱を問う国民投票が行われました。その結果は、
賛成 51.9%
反対 48.1%
という驚くべき僅差ながらも、離脱を賛成する声が強いということになりました。これを踏まえて、イギリスのメイ首相はEUを離脱する手続きを2017年3月に開始しました。
日本への影響は?
ではこれがどう日本に影響するの?というと、
イギリスがEUを離脱することによって信用が下がりポンドが下落します。また、EU全体でもイギリスの離脱によってユーロの価値が下がるとされています。そうなると、円が強くなり、イギリスを中心として、ヨーロッパ全体への輸出が停滞すると考えられます。日本の自動車を中心とする製造業は大打撃を受けること間違いなしです。
それだけでなく、現在イギリスに進出している日本企業は、EUでの関税が無いことを利用していましたが、離脱すれば再び関税が復活する可能性もあります。
つまり製造業を中心とした輸出をメインとしている企業、イギリスに会社を置いてる企業、この2つの企業はイギリスのEU脱退による影響が大きいとされています。
その一方で、食品産業などの輸入をする企業では円高のお陰で安く原材料を仕入れることができ、追い風になると言われています。いずれにしても、この問題は日本にとって無視することができるものではなく、実際に国民投票で離脱派の勝利が決まった2016年6月24日、日経平均株価は前日比で1286円も急落し、これは約16年ぶりの下落幅となったそうで、日本にもかなりの影響力があることを数字が示しています。
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いかがでしたでしょうか?まとめると、イギリスは離脱してもしなくても国にとってのデメリットがあり、そんな中で離脱をするという決断をしました。
しかしEUの離脱をするといっても、すぐにできるものではなく、リスボン条約の取り決めによって、離脱までに最低2年が必要となってくるそうです。
それだけでなく、EU議会では過半数以上の承認票、EU理事会では27ヵ国中20国以上の離脱の承認が必要となってきます。こうなると例えイギリスでも一筋縄ではいきません。ただ辞めるのではなく、加盟国を納得させられる条件を提示する必要があります。当然離脱の手続きをしている間もEUへの資金の支払いをはじめとする役割を果たす義務がありますので、イギリスはいかに早く交渉をまとめることができるのか、というのが今後のポイントになってくるでしょう。
参考
外務省 EU加盟国と地図
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page22_000083.html
東洋経済ONLINE イギリス離脱決定で深まる「EU崩壊」の危機 2016年06月24日
http://toyokeizai.net/articles/-/124202
nikkei BP net 英EU離脱が与える日本経済への影響と参議院選挙の行方
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/129957/070700071/
日本経済新聞 日経平均大引け、急落 1286円安 英EU離脱派勝利で 2016年6月24日
http://www.nikkei.com/article/DGXLAS3LTSEC1_U6A620C1000000/
日経ビジネスオンライン それでも、英国がEUから出たい理由
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/062000369/