なぜ男女で話し方が違うのか?言語学から見る言葉の不思議 上智大学|外国語学部『日本語教育学(社会言語学)』

言語学って難しそう?

皆さんは「言語学」という学問を知っていますか?「言語学」と聞くと非常に堅苦しくて、難しそうに感じるかもしれません。しかし、実は言語学とは私たちの生活に密着しており非常に面白い学問です。今回は皆さんに言語学の面白さをご紹介したいと思います。

授業概要:上智大学外国語学部で行われている「日本語教育学(社会言語学)」は、私たちの身近な事象を取り上げつつ、その事象をわかりやすく学問的に視点で見ていきます。名前の通り、日本語教育に興味がある人が多く取る講義です。日本語教を育するためには私たちが日本語をしっかり論理的に理解しておく必要がりますよね。そのための日本語や他言語の基礎を学ぶ授業です。

 

言語学的視点から説く、コミュニケーション能力の根本とは

日本に住んでいる私たちは、多くの場合日本語を使って日本人とコミュニケーションを図りますよね。その時、どんな「能力」が私たちには必要だと思いますか? 

もちろん単語、文法は必要ですよね。しかし、それだけでは私たちはスムーズなコミュニケーションは取れないのです。スムーズなコミュニケーションを取るには、言語学的に4つのポイントがあるのです。

1.文法能力

先ほど単語・文法に関して正しい知識があるだけでは十分ではないと言いましたが、もちろん文法能力は必須なものになります。私たちは無意識のうちに、文法的能力を身につけています。

しかし、皆さんは「この人の話わかりにくいな」と思ったことはありませんか?その際、その人の話は主語が抜けていたり単語を誤った使い方をしている場合が少なくありません。つまり、相手にわかりやすい話は、文法的にも正しい話である必要があるのです。

2.社会文法的能力

これは端的に表すと「空気を読む能力」です。「いつ・どこで・誰に対して・どのように話していいのか?話してはいけないのか?」を見極める力のことなのです。

空気が読めない人との会話は楽しくないですし、複数で話していると気にはヒヤヒヤしますよね。

3.談話能力

これは文と文を繋げて、意味のある文章にする力です。

例えば「私は友人と渋谷のレストランに行った。友人とご飯を食べた。」という文があったとします。これは意味はかろうじて伝わるかもしれませんが、私たちが日常で使うような自然な文章ではないですよね。そんな時に、文と文の間にどのような言葉を入れればいいのかを考える能力が必要です。

4.方略的能力

コミュニケーション中に何か問題が起きた時、それを解決する能力です。

例えばあなたが「新幹線」という単語が会話中思い出せなかったとします。その時におそらく「すごい速い電車」などと表現しますよね。これが方略的能力です。

若者語(略語)はなぜ使われるのか

皆さんは生活の中で、学生と親世代が話す言葉が違うということを実感しています。ではなぜ、私たちは若者語、略語を使うのでしょうか。それにはいくつかの理由があるのです。

1.連帯感を生むため

若者語は「社会的に評価が高くない言葉」とも言えますよね。私たちは評価が高くない言葉をあえて使うことで、その言葉を使う人の間に連帯感や仲間意識を感じます。

2.楽しむため

若者語を使う機能の一つに「娯楽機能」というものがあります。これは若者語を使うことによって、会話に笑いを生じさせ楽しむ機能です。

冷静に考えれば面白くないけれど、若者語を使って爆笑ことが皆さんも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

3.会話を盛り上げるため

若者語には、会話を盛り上げる機能があります。また、若者語には多く「略語」が見られますよね。略語を使うことでテンポを良くする機能があると言われています。盛り上がりにはテンポ感が欠かせませんよね。

男女の話し方の差はどこから生まれるのか

皆さんは無意識のうちで男性っぽい話し方・女性っぽい話し方を区別していますよね。日本人は特にその意識が強いと言われています。なぜなら、日本にはいずれか一方の性だけが使う言葉と、どちらかというと一方の性がより頻繁に使う言葉が存在します。

しかし、英語には一方の性しか使わない言葉は存在しないのです。ここからも、日本語における性差がはっきりしていることがわかります。

また、皆さんは女性っぽい話し方と言うと、どの様な話し方をイメージしますか?多くの人が男性の話し方よりも丁寧な話し方を想像すると思います。ではなぜ女性は丁寧、つまり社会的に評価が高く標準的な言葉を話すのでしょうか。それには、女性にとって言葉は社会的地位を示す唯一の道具だから。

女性は丁寧に話せという社会的圧力が強いから。また、女性は社会的弱者なので、強者(男性)に対して丁寧にする必要があるから、という理由が挙げられます。

この様な潜在的意識が、男女の話し方の差を招くのだと言われています。

結論

言語学と聞くと難しそうに聞こえるかもしれませんが、案外身近な事例を取り上げています。
上智大学の学生(外国語学部、教育学部)は、もし興味があれば言語学の講義を取ってみてください!