プロフィール
武蔵野音楽大学
大学院2年生 山本己太郎(やまもとこたろう)
大学4年生時に友達同士の軽い気持ちで弾いてみた、「LINE着信音即興曲」が大ヒット。
そんな山本さんのルーツと、「LINE着信音即興曲」の誕生秘話について詳しく聞いてみたいと思います。
趣味程度でピアノをやっていた学生時代
—ピアノを始めたきっかけは何ですか?
もともと親がピアノ教室をやっていたことから、5歳からピアノを始めていました。ただ、クラシックに良くあるお坊っちゃまみたいな、エレガントなイメージが好きじゃなく、趣味程度でやっていました。実は中学は陸上部、高校はテニス部に所属してたんです。(笑)
ピアノの練習は本当にやっていなくて、高校2年生ぐらいまでは、1週間に30分程度でしたね。もちろん高校は普通のところで、音大進学者は僕が初めてでした。
—一般高校から音楽大学進学へのきっかけは何でしたか?
高校生時代、そんなに練習していなかったのに、ある教室内の試験で大人数の中から選抜に選ばれたのです。そこでこれ、もっと練習したらどこまでいけるんだろう?という気持ちが湧いてきて音大に進学することを決めました。
—音大に進学してからの生活は、変化はありましたか?
高校では、ちょっとピアノが弾ければ「すげえ!」と言われるような環境でしたが、やはり音大に進学すると、みんな弾けて当たり前でしたね。しかし僕は目立ちたがり屋なので(笑)何か面白いことができないかと考え、クラシックをジャズアレンジしたりし始めました。
—音大生のプライベートはどんな感じですか?
例えば友達の家で飲み会なんかをやっていると、楽器の音がしょっちゅう飛び交うんですよ。音大生の部屋には必ずピアノがあるので、誰かが必ず弾き始めるんです。そこではクラシックの音楽は弾かず、CMの曲などのポップな曲を弾き始めたりします。普通の大学生が飲むときに音楽をかけるのと同じ感覚ですね。やはりその中でも少しずつ工夫はしていて、いつも通り即興で弾くと同じようになってしまうので、違う曲調にするためにまた勉強したりしていましたね。
噂の「LINE着信音即興曲」の誕生秘話
—その延長で例の曲が誕生したんですか?
そうですね。大学4年生の時に、学園祭の企画を詰めるための合宿がありまして、最終日に花火をしたり、酒を飲んだりしていたんですよ。本当にいつものノリでした。あ、てか僕、酔っ払っててあまり覚えてないんですよ(笑)
—え(笑)
You tubeの動画には見えてないですけど、画面の端にウィスキーとかめっちゃおいてあるんですよね(笑)
—よくそんな状態であのクオリティーを出せましたね(笑)
—その後の反響はいかがですか?
あの「LINE着信音即興曲」という曲名は後輩が命名してくれました。本当にその場のノリで、後輩がたまたま動画を撮っていただけなんですけど、Twitterで広めたら、1日で1000いいねついたんですよ!その後のTwitter、Facebookでのいいね、リツイートを合わせると、約3万の何かしらの反応がありました。ものすごい拡散力でした。
ありがたいことに、今では YouTubeの再生回数は約110万回までに達しています。このおかげで、LINE MUSICから公式音楽にしないかと声がかかったり、
オフィスの保留音にしないか、との提案も頂けたりしました。
—これを仕事にしたらすごく楽しそうですね!
そうですね!ただこれを仕事にするにはまだまだ技量が足りないため、本業はクラシック、趣味でアレンジをしたいと考えています!
なかなか厳しい、音大生の就職の実情
—あの技量があってもまだまだなんですね。
はい、実は音大を卒業してもピアニストとしてお金を稼ぐことが出来る人は1%程度なのです。ちなみに今、演奏だけで食べていける人は日本には1人もいないんじゃないかと思います。だいたいの人は演奏活動をしつつ、ピアノを教えたりして生計を立てていると思います。
—音大生って就職活動するんですか?
音大生でプロを目指しているのは数人。僕の通っている大学では5割程度が一般就職、3割が教室でピアノを教えたり学校で教えたりしています。進学したり留学したり将来についてまだ悩んでいる人が残りの2割ですね。だいたい3年生に進級する際に、プロになるか一般就職でみんな悩むんですよね。僕の進路の決め方はちょっと変わっていまして。音大に入ってからはほぼ毎日ピアノの練習をしていたのですが、あえて一日何もしない日を作ったんですよ。朝早くから自分のやりたい事をやっていたのですが、15時くらいにはピアノが弾きたくなっていたので、自分はピアノを弾くことが幸せなのだなと思いピアノを職にしようと決めました!
将来行っていきたい活動
1番の目標は演奏活動をして人々が楽しんで頂ける音楽を提供する事です。LINEの件みたいに多くの人が喜んでくれると、自分自身嬉しいですし、もっと喜んでもらおうとやる気が出ます!プライベートでも演奏会でも、とにかく喜んでもらえることは嬉しいです。しかし、今の世の中の現状は、クラシックは敷居が高いイメージがあるので一般の人はあまり聞きません。
だからこそ、クラシックが好きな人もポップスが好きな人も楽しめるような音楽を提供していきたいと思っています。
音楽をやっていて楽しかったこと
日常、普通の人だったら気にしない音を100%楽しむことができます!例えばドラマや映画。時々バックの音楽の作成依頼がくるんですよ。で、その時は無音の状態で映像が届くので、自分で考えて曲を作らなければいけないんです。だから、普段ドラマや映画を見ていると、「この音楽すげーな」って思う時があって、これって音楽をやっていたからなのかなって思います。
今ピアノ教室で働いているのですが、生徒に「なんで音楽ってやらなきゃいけないんですか?」って聞かれることがあるんです。この世から音楽がなくなったら、すごく味気ない世界になるんですよね。だからこそ、音楽は必要。人のコメントだけの映画はつまらないです。感動させるシーンではどの映画も音楽はついていますからね!
大学生へ一言
大学生って一番は遊びたくて、だからお金が欲しくてバイトすると思うんです。ただ、やはりその中でも、何がやりたいのかを見つけて欲しいですね。でも将来何がやりたいのかわからない人が多いじゃないですか。それを考える時に、「何がやりたいか」ではなく、「何ができるようになりたいか」と考えるのがオススメです。ちなみに僕は今、異国の言語や作曲ができるようになりたいです。とりあえずはやってみる。つまらなかったらやめれば良い。それで良いと思います。以前、字の勉強をしようと思って始めたんですけど、つまらなくてすぐやめました。(笑)
仕事に対しての価値観として、「お金はもらえないけど楽しい仕事がしたい」と考える人と、「お金はもらえるけど我慢して働いて休みに遊ぶ」と考える人がいると思います。ゴッホの名言で「私には、好きでもない仕事をしているあなたのほうが、狂っているように見える。」という言葉があります。どうしても後者の人が多くなってしまうのが現状ですが、僕は2つとも達成できるようにするために今後も頑張っていきたいと思います!