文豪ってご存知ですか?
そもそも文豪とは、どんな人物のことを指すのでしょうか?
辞書によると
「非常に優れた文学者・大作家」
(出典元:Wedlio辞典)
とあります。つまり社会的に一定の評価のある作家の事を指します。
そんな中、最近では「文豪ストレイドッグス」「文豪とアルケミスト」など文豪を題材にした漫画やゲームが流行っています。
それによって文豪、延いては文学作品に興味を持つ人も増えてきましたね。
最近は流行っている文豪ですが、皆さんは海外でも愛されている彼らのことを、どこか自分達とはかけ離れた、雲の上の存在のように感じていませんか?
しかし、今や文豪と呼ばれている彼らも今の学生たちと同じように学校に通っていました。
今回はそんな文豪たちの学生時代について紹介していきたいと思います。
学校制度について
多くの文豪が活躍した明治から昭和初期にかけては、学校制度が現在のものとは異なりました。
現在は保育園・幼稚園等から小学校→中学校→高校→大学と上がっていくのが一般的です。
しかし、当時は尋常小学校→高等小学校→中学校→高等学校(旧制高校)→大学という流れが主流でした。
また現在はほとんどの人は高校卒業後に大学進学を目指しますが、当時の大学進学率は低く戦前は10%、明治に至っては1%程しか居ませんでした。
今では多くの人が入学することが出来る大学ですが、当時は金銭的に余裕があり、且つ優秀な人しか入れませんでした。
つまりこの時代の大学生とはかなりのエリートなのです。
文豪はエリートが多い!?
そんな中、文豪と呼ばれる彼らは大学まで進学している人が多いです。
中でも夏目漱石や芥川龍之介、谷崎潤一郎はナンバースクールと呼ばれる旧制高校に通っていました。
旧制高校自とはが帝国大学へ進むための機関です。つまり、エリートの養成所という事なのです。
その中でもナンバースクールは名門校として知られていました。
名前の通り、学校名は第一高等学校、第二高等学校と数字が割り振られており、第八高等学校までありました。
中でも難関だったのが第一高等学校でした。
現在の東京大学教養学部・千葉大学医学部・薬学部の前身となった学校です。
この学校に在籍していた生徒の多くは東京帝国大学(現:東京大学)に進学しています。
文豪の中でこの第一高等学校に在籍していたのは先述した3名などがいます。
また東京帝国大学に進学したのは他にも森鴎外や川端康成、太宰治など、いずれも日本人なら聞いた事のある有名人物ばかりです。
このように紹介すると「天才で、優秀な人たちばかりだな」と思ってしまいます。
しかし彼らの学生時代を見てみると、意外と親近感がわくかもしれません。
文豪たちの学生時代
文豪たちはどのような学生だったのでしょうか。
今回は文豪と呼ばれる人の中でも特に有名な4名の人物の学生時代に焦点を当ててみました。
夏目漱石
文豪の代名詞的存在と言われる夏目漱石。
『夢十夜』『坊ちゃん』『こころ』などは教科書にも載っている作品なので授業で読んだ事のある方も多いのではないでしょうか。
夏目漱石は頭の良さとその文章力から現在でも多くの人の尊敬を集めています。
そんな夏目漱石も大学生時代は東京専門大学(現:早稲田大学)で英語講師の仕事をして学費を稼いでいました。つまりいわゆるアルバイトをしていたのです。
この点は現在塾講師などのアルバイトをしている学生と似ていますね。
しかし他の大学の教壇に立って講義をするというのは、中々凄い事ですよね。
志賀直哉
明治から昭和にかけて活躍した作家です。
「小説の神様」と呼ばれ、多くの作家に影響を与えました。
里見とんの随筆に「”友達”耽溺(たんでき)」と紹介される位、友人を大切にしていた志賀直哉ですが、特に仲が良かったと言われるのが武者小路実篤でした。
中等科時代の志賀直哉は決して模範的な優等生とはいえず、二度落第しています。
これについて志賀直哉は、授業中の落ち着きのなさが原因だったと説明しています。
「小説の神様」とまで呼ばれる方なのになんだか意外ですね。
落第・留年などは一般的に悪いイメージが付いて回りますが、2度の落第によって志賀直哉は生涯の友となる武者小路実篤と出会う事になります。
これを聞くと留年がデメリットだけではない事がわかりますよね。
芥川龍之介
芥川龍之介を知らない人はいない弟子はないでしょうか?それくらい有名な人物です。
先述した夏目漱石の門弟でもあります。
彼はなんとあの第一高等学校に「成績が優秀すぎる」との事で試験を免除された上でで入学しました。
卒業後も東京帝国大学の英文科に進学するのですが、この学科は毎年数名しか合格者が出ないようで彼の優秀さが伺えます。
学年に一人は面白いくらいに頭のいい人物がいましたが、そう言った類の人物なのかもしれません。
しかし師である夏目漱石が好きすぎて、代表作の一つ『吾輩は猫である』に肖り、中学時代に『吾輩も犬である』というエッセイを書くなど、可愛らしい一面もありました。
太宰治
太宰治は手紙のような、独特な文体で様々な世界をえがく作家です。
『走れメロス』を近代文学小説の中で初めて読んだという人は多いのではないでしょうか。
彼は東京帝国大学仏文科に入学していますが、中退しています。
彼の学生時代のエピソードは豊富ですが、中でも有名なのが高校時代の落書きノートでしょう。
ノートに落書きをするという行為は、学生なら一度はした事があるのではないでしょうか。あの太宰治も同じように落書きしていたと考えると、何だか親近感を覚えますね。
落書きの内容ですが、人物の顔はもちろん、「津島君*は実に美男なり」という言葉や尊敬していた芥川龍之介の名前を隅にたくさん書いており、今では文学館で一般公開されるにまでに至っています。
(*注:本名 津島修治)
太宰治の落書きノートは貴重な資料なのは確かですが、本人もまさか学生時代の落書きまで公開されるとは思わなかったのではないでしょうか。
最後に
いかがでしたでしょうか。
文豪と呼ばれ後世にまで名を残す彼らも、学生時代は私たちと変わらない一面を持っていました。「敷居が高い」「難しそう」と敬遠していた文豪のこういったエピソードを聞くとと、私たちが今まで持っていたイメージが払拭されるのではないでしょうか。
また文豪は、いい学校を出た頭のいい人物が多いというイメージが強いですが、中退者や落第者が多いというのも事実です。
エジソンの言葉に「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である。」という
格言があります。ここには「1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になる」という意味が含まれています。
後世に残る作品を書くのには学歴だけではなく、センスや運も大切なのでしょう。
そう考えると、これを読んでいる皆さんも後の世に名前を残すチャンスがあるという事です。今日にがある方は是非ペンを持ってチャレンジしてみませんか?
未来の文豪は、もしかしたらあなたかもしれません。
参考文献
◯阿川弘之『志賀直哉 上』1994.岩波書店
◯石井千湖『文豪たちの友情』2018.立東舎
◯夏目漱石『夏目漱石全集 10』1972.筑摩書房
◯石川淳ほか『現代日本文學全集49 石川淳 坂口安吾 太宰治 集』昭和29年.筑摩書房
◯Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%97%E8%B3%80%E7%9B%B4%E5%93%89
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%AE%B0%E6%B2%BB
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E6%BC%B1%E7%9F%B3
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%A5%E5%B7%9D%E9%BE%8D%E4%B9%8B%E4%BB%8B
◯weblio辞書
https://www.weblio.jp/content/%E6%96%87%E8%B1%AA