金融工学っていったい何?
皆さんは金融工学という学問を知っていますか?
おそらく、知らないという方が大半ではないでしょうか。金融工学とは以下のことです。
金融工学は、値動きのある金融商品のリスクやリターン、理論的な価格等を、数学やコンピューターを駆使して数値化し、分析し、リスクヘッジやリスクマネジメントに役立たせたり、投資や資産運用の意思決定に役立たせたりすることを研究する学問です。
(出典: http://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ki/J0258.html)
金融工学という学問は、日本ではあまり研究が盛んではありません。しかし、リーマンショックの原因となったデリバティブと共に一気に注目され始めています。
簡単なデリバティブの例としては、ある証券についてあらかじめ売買の約束する先渡し、先物取引、将来売買する権利を売買するオプション取引などがあります。そのため、リスクの高い取引の一面を持ち合わせています。リーマンショックでは住宅ローン担保など様々な金融資産を混ぜて、デリバティブとして販売しリスクをごまかしていました。
今までの説明だけですと、金融工学というのは企業の社長や投資家など一部の専門家にのみ関係がある話に思えるかもしれません。
しかし、決してそういう訳ではありません。金融工学は社会人にとって、世の中を渡っていくのに必ず役立つ学問です。それ以外にもリスクマネジメントの方法など普段の生活の中でも使える知識が豊富にあります。
今回はこの金融工学の中でも投資におけるポートフォリオ理論からどうやってリスクを回避できるのか、その方法についてお伝えします。
ポートフォリオとは?
ポートフォリオ(portfolio)とは英語で「紙ばさみ、折りかばん、(携帯用の)書類入れ」とういう意味です。金融工学においては「複数の証券から構成される組み合わせ」という意味で使われます。
金融取引では、様々な銘柄の証券など、複数の投資資産に分散投資を行います。なぜポートフォリオを組んで投資を行うのかというと、リスクを分散(減少)させられるからです。
このことを上手く表した諺(ことわざ)があります。”Don’t put all your eggs in one basket.”という諺で、日本語に訳すと「一つの籠に全ての卵を入れてはいけない」という意味になります。
卵を運ぶ時、1つの籠にまとめてしまえば簡単ですが、誤って籠を落とすと卵が全てダメになってしまいます。しかし、あらかじめ卵を2つの籠に分けておけばどうでしょう?籠を一つ落としてしまっても被害は半分で済み、残りの半分の卵は助かります。同様に籠を増やせば増やすほどリスクは減らすことができます。
この諺のように、分散投資によるリスク回避は金融取引以外の場面でも役立つ考えです。
例えば、海外旅行に出かける際に、現金を財布と鞄にそれぞれ分けて入れておけば、どちらかを無くしたとしても全額失わずに済みます。またプロのサッカー選手は試合で移動する際、チーム全員が1つの飛行機に乗るのを避け、複数の便に分かれて移動します。これも不慮の事故の際、チーム全員が被害を受けるのを避けるためです。
しかし、ポートフォリオには限界があります。先ほど卵の例で籠を増やせば増やすほど、リスクは減らすことができると説明しました。ですがどこまで籠を増やしてもリスクを0に減らすことはできません。投資においても、基本的には多くの銘柄に分散投資した方がリスクは減らせますが、次第にリスク削減効果は減ってきてしまいます。リスクを0にできるような万能な解決策はないということを意識しておくことが重要です。
リスク回避の5つのポイント
先ほどまでは、ポートフォリオを用いて、いかにリスクを分散されられるのかについて説明してきました。ここからはポートフォリオ以外の、金融工学で用いられるリスク回避のポイントと方法を紹介していこうと思います。
予測
そもそもなぜリスクが発生するのでしょう?その原因は不確実性にあります。つまり、不確実性を減らすことがリスクを減らすことに繋がります。そのための方法として予測精度を高めるという方法があります。
例えば天気予報の精度が高まれば、突然の雨にあたるリスクを減らすことができます。このように将来の出来事について正確に予測することで、リスクを回避することができます。
余裕
余裕を持つというのもリスク回避につながります。例えば約束に遅刻しないように余裕をもって早く家を出る、急な出費のために少し多めにお金を持ち歩く、などはこの余裕にあたります。
共有
1人では背負いきれないほどの大きなリスクがある場合、これを沢山の人で手分けして分担することで、1人当たりのリスクを減らすことができます。
例えば、火災保険や損害保険のような保険は、誰かが受けるかもしれない大きな損害を、加入者全体で分かち合うことで、1人当たりの負担を減らすことができます。このように、みんなで少しずつ負担しリスクを共有することで、自分のリスクを減らすことができます。
移転
自分が持つリスクを、ほかの人に肩代わりしてもらうのが移転です。
例えば事故保険や災害保険は保険という契約を利用して、実質的にリスクを保険会社に移転しています。詳しい説明は省きますがリーマンショックのきっかけとなったデリバティブもこの移転の考えを使っています。
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いかがだったでしょうか?金融工学、ポートフォリオという聞きなれない単語からとっつきにくさがあったかと思います。しかしここで述べたリスク回避の考え方は、非常にシンプルなもので、日常生活でも使えるものです。この記事を読んで少しでも金融工学が面白いと感じたら、是非とも金融工学を学んでみてください。
参考文献
古川浩一,蜂谷富彦,中里宗敬,今井純一|コーポレートファイナンスの考え方 中央経済社 2013
(http://www.biz-book.jp/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9/isbn/978-4-502-47290-9)